
スペイン・フランスで生活している中で、日常的に使えてどうしても欲しかった野菜が日本の栗かぼちゃです。
どんなに探しても出会ったことはありません。
栗かぼちゃに似ている「Petit marron」(プティ・マロン)という品種はBioショップやオーガニックスーパーなどで見かけたこともありますが、やっぱり食感と甘みがちょっと違います。
スペインで主流なかぼちゃは果皮が白っぽい大振りなタイプで果肉は少し水っぽいです。
水気がある分、調理過程で水分が蒸発するオーブン焼きには合っていますが、和食のかぼちゃ煮をしようとすると、果肉がびしゃびしゃになって失敗します。
そんなことを思い続けながら6年・・・。知り合いの畑を一部間借りさせてもらえることになり、自分たちでかぼちゃを栽培してみることにしました。
種は日本から持ち込んだものです。
目次
栗えびすと坊ちゃんかぼちゃ
日本から持ち込んだ種は2種類で、栗えびすと手のひらサイズの坊ちゃんかぼちゃ。
栗えびすは日本で流通している主な品種です。
かぼちゃと聞いてすぐにイメージが浮かぶ、スーパーで売られているほとんどのかぼちゃはこの栗えびすです。
一方、坊ちゃんかぼちゃは小柄というか小粒で手のひらサイズ。
栗えびすよりもさらに味が濃く、1つが小さめだから調理するにも使い切りができて便利だと聞きました。推薦者は友達のお母さんです。

かぼちゃを育てる4つのポイント
品種・種類に関わらず、かぼちゃの栽培で共通するのが4つのポイントです。
乾燥に強くて日当たりを好むって、まさにスペインの気候にぴったり!
- 乾燥に強く、過湿に弱い
- 酸性を嫌う性質なので堆肥に石灰と混ぜ中和させる
- 日当たりのいい場所で発育させる
- 苗と苗の間に十分なスペースをとってウドンコ病対策をする
*苗と苗が近くすぎると蒸れてウドンコ病が発生します
*ウドンコ病になっても病気の部分を切除すれば実は食べられます
次に、実際の栽培方法を説明していきます。
スペインで栗かぼちゃを育てる
日本とは気候・土壌・水質が異なるスペインで、日本のかぼちゃが実らせることができるでしょうか。
2種類のかぼちゃ、栗えびすと坊ちゃんかぼちゃで自ら実験してみました。
今回は、より一般的な栗えびすの育て方を記していきたいと思います。
栗えびすの特徴
- 果重:1.5kg前後
- 果肉:濃黄色で厚い。
- 食味:粉質でホクホク。
- 収穫:開花後42日~47日で完熟期を迎える。
栗えびすの種蒔き・収穫時期(目安)
<一般平暖地>
育苗:3月~4月末まで
収穫:6月下旬~8月下旬
<冷涼地>
育苗:4月~5月中旬まで
収穫:7月中旬~9月上旬
と、このような説明が袋に書いてあります。地中海気候で天気も気温も恵まれた環境にあるバレンシアは、一般温暖地と同じと判断しました。
育苗時期の日中の最高気温は日本の一般平暖地よりも若干高めですが、朝晩は冷え込みます。
なので、一般平暖地の育苗期間の後半近く、4月上旬に種蒔きを始めました。

かぼちゃ栽培の土台作り
- うね幅2m、苗間1mで種をまく算段で土づくりをします。
- 直径30cm、高さ3cmの円錐形に盛り上げた土の中央に2~3粒の種をまきます。
- 成長してつるが伸びて来たら、間引きと制枝をします。
(サイトによって方法が異なるのでご自身で納得した方法を採用してください) - 堆肥や追肥を適宜行います。
種蒔き〜収穫までの様子
下の写真は種蒔き~2ヶ月経過までの様子です。
(画像はクリックすると大きな写真で見られます)
4月16日、畑を耕して種蒔き。
夫の友人が手伝ってくれたので作業が進みました。
うね幅2m、直径30cmの円錐形が作れるような土台作りです。
5月6日、種蒔きから3週間
ぽつぽつと芽が出始めました。
全体的にはあまり変化が感じられませんが、少しずつ発芽しています。
5月20日、種蒔きから5週間
先に発芽したものはぐんぐんと育ってくれています。
全ての種が無事に発芽してくれました。
6月3日、種蒔きから7週間
青々と育ち、葉も茎もだいぶしっかりしてきました。
甘みを強く引き出すため、水やりは最低限に。この時点で花が咲き、下部にかぼちゃの赤ちゃんらしきものが実ってきました。
この部分が大きくなってかぼちゃに育っていきます。
このかぼちゃの赤ちゃんらしきものですが、その後のかぼちゃの発育を妨げるので可哀想ですがそれぞれの株から一番果のみ摘み取ります。
6月14日、種蒔きから2ヶ月
種蒔きから2ヶ月が経ちました。
こんなに大きく育ち、かぼちゃの赤ちゃんが目に見えるようになりました。
6月25日、種蒔きから2ヶ月と10日
10日前には赤ちゃんだった身がだいぶ大きくなりました。スイカの外皮に似ていて、同じウリ科なんだと改めて思いましたね。
写真上段の2つが栗かぼちゃで、下段2つが手のひらサイズの坊ちゃんかぼちゃです。
7月25日、収穫(種蒔きから3ヶ月と10日)
かぼちゃの収穫は開花してから35日で可食期を迎え、完熟は開花後42〜47日での収穫を目安とします。
私たちが収穫したのは少し遅めで開花後52日目です。
収穫後は4週間寝かせる
やっと収穫までたどり着いたかぼちゃですが、食すまでにはまだまだ時間をかけます。
収穫後は4週間ほど放置し、かぼちゃ果肉のでんぷん質を糖化させて甘みを引きだします。いつ収穫したかが分かるようにそれぞれのグループにラベルを貼りました。
9月1日、試食①(収穫から5週間)
7月25日に収穫し、5週間寝かせました。
どんな料理にしようかとワクワクしながら考えましたが、まずはかぼちゃのホクホク感を楽しむために日本食のかぼちゃ煮にしてみました。
かぼちゃ本来の甘みを感じられる、かぼちゃサラダも試してみてました。
9月3日、試食②
次の試食メニューはかぼちゃグラタンです。
今回はかさを増すためにジャガイモも入れたんですが、大きめのかぼちゃ丸ごと1個を使うとかぼちゃ感たっぷりのグラタンになります。
個人的にはかぼちゃ丸ごと1個でたっぷりかぼちゃ感の方が好きですね。
まとめ
スペイン(バレンシア)の気候・土壌・水質でも、日本の栗かぼちゃはおいしく実ることがわかりました。
といっても、そのポイントは「オーガニックな土壌」だからかもしれません。家庭菜園では気になる化学肥料を自分たちで調整できるのがいいですよね。
夫婦ふたりじゃとても食べきれないほどのかぼちゃが実り、親しい友人や家族にもおすそわけをしまくり、食卓にかぼちゃメニューがたくさん並んだ秋冬になりました。
スペイン人からは、「これが日本のかぼちゃ?」と珍しいものを見るような顔をされ、在住日本人の友人からは、「日本のかぼちゃ作ったの?」と驚いていました。
スペイン人から聞いたフィードバックでは「日本のかぼちゃはホックホクでおいしい!」という言葉をいただいたので、日本の栗かぼちゃはスペインでも人気がでることと思います!