
スペイン三大祭りのひとつ、バレンシアの火祭り。
開催日程は毎年3月15日~19日ですが、3月にも入ればお祭り本番を前に街中が火祭りモードに変わります。
バレンシア市内の市庁舎前広場では毎日14:00に爆竹ショーが繰り広げられ、火祭り本番になると街中のいたるところで巨大な張り子人形が現れます。この張り子人形をファリャ(Falla)と呼び、火祭りを意味するファリャス(Fallas)の語源になっています。
この張り子人形は火祭りが終わったと同時に次年度のプロジェクトが開始され、1年をかけてデザインや構築などを計画していきます。丸1年かけたプロジェクトとなれば、関係者にとって張り子人形のお披露目は感無量といったところでしょうね。
目次
火祭り・張り子人形はコンテスト式
街中に突如と現れた巨大張り子人形は、ただの鑑賞用ではなくコンテストで競われているのをご存知ですか?
毎年、ありとあらゆるデザインの張り子人形が作られていますが、完成された張り子人形の中で一番の美しさを競うコンテストになっています。最優秀賞に選ばれた張り子人形は特典として作品の一部がファリャス博物館に飾られます。
バレンシア市内・張り子人形ダイジェスト
この張り子人形たちは2015年の火祭り時に撮影したものです。当時の首相・ラホイさんの姿までコメディータッチで作られていました。
この年のファリャ最優秀賞はライオンの張り子人形で、火祭りメイン会場とも言える市庁舎前広場(Plaza del Ajuntament/プラサ・デル・アユンタミエント)の作品です。写真では分かりにくいですが、周りのビルと比較して高さ4・5階といったところです。
(写真をクリックして頂けると大きな写真でご覧になれます)
最優秀賞の張り子人形は、火祭り博物館に保管
前にも書きましたが、2015年のファリャ最優秀賞はライオンのデザインで市庁舎前広場に飾られた作品でした。最優秀賞に選ばれた作品は、デザインの一部が火祭り博物館にて保管されます。
私はてっきり人形そのままを保管するんだと思っていましたが、あんなに大きな張り子人形が毎年1体ずつ博物館に増えていくのは現実的ではないですよね。はい、保管されるのは人形やデザインの一部のみです。
この火祭り博物館では歴代の最優秀賞を受賞した張り子人形が見られますので、興味のある方は「MUSEO FALLERO」(火祭り人形博物館)へ足を運んでみてください。
火祭り博物館:MUSEO FALLERO(ムセオ・ファリェーロ)
住所:Plaza Monteolivete, 4, Valencia, Spain
公式ホームページ: http://www.valencia-cityguide.com/tourist-attractions/museums/museo-fallero.html
鑑賞期間はたった3日!火祭り最終日に燃やされる張り子人形
張り子人形のプロジェクトは1年をかけて綿密に計画され、やっとお披露目されたと思いきや鑑賞期間はたったの3日で最終日を迎えます。
この3日間でどの地区・どの人形が素晴らしかったのかが判定がされることになりますが、たとえ最優秀賞に選ばれた張り子人形も結局は燃やされてしまいます。これが火祭りの締めくくりです。
たった数日間しか披露されない人形を前に少しもったいない気もしますよね。中には燃やす瞬間を見守りながら感極まって涙する人もいるそうですよ。
張り子人形はなぜ燃やされるのか?
最終日に人形を燃やす背景には、歴史的・宗教的な理由があります。
スペインはカトリック国です。他宗教の方ももちろんいますが全体的に見てカトリックの占める割合が多く、スペイン=カトリック国と考えてください。
カトリックにとって、とても大事なイエス・キリスト。その父は大工業を営み、3月19日になると守護聖人である「Saint Joseph」(聖ヨセフ)を同僚たちと祝うために古い道具や使い物にならない材木・屑などを燃やしたことが火祭りの始まりと言われ、18世紀に入った頃には今の火祭りの形が出来上がっていたそうです。それから3世紀たった今でも、変わることなくバレンシアの伝統祝祭として継承されています。
この背景から火祭りの最終日は曜日に関係なく3月19日、3月15日~19日の期間が火祭り本番となり、曜日に関係なく暦通りの日付で行われています。
また、この3月19日はキリストの父が起源していることから、スペインではサン・ホセ(San José)の日として父の日にもあたります。
バレンシア州にとって3月19日は、火祭り最終日かつ父の日として大きな意味のある日なんです。
火祭り見納め!深夜0時に燃やされる張り子人形
火祭りの最後を締めくくるのは、クレマ・デ・ファリャ(Cremà de Falla)と言われるイベントです。(発音のアクセントは最後のマにかかります)
街中のいたるところでお披露目された張り子人形が一斉に燃やされてしまいます。燃やすことを「クレマ」と言い「ファリャ」は人形のことですから、文字のごとく「人形を燃やす」という意味です。
最終日の翌日が何曜日であろうが、張り子人形が燃やされ始める時間は決まっていて、必ず3月19日の深夜0時。19日から20日に日付が変わった瞬間に点火されます。
街中にある張り子人形が同時刻に次々と燃やされ始め、特にバレンシア市内中心部・市庁舎前広場では数十メートルにも及ぶ大作が一気に燃え上がり、観客を魅了してくれます。
市庁舎前広場の張り子人形と比べるとスケールの大きさは雲泥の差ですが、張り子人形が燃やされる様子をご覧ください。これは私の住む町内のものです。バレンシア市内だけでなく近郊の町でも同じルールでコンテストが行われ、同時刻に人形は燃やされます。
バレンシア民族衣装を着たミス・ファリェーラの点火式
点火する前にまず、燃えやすいよう張り子人形の周りにガソリンをまきます。
準備が整ったらバレンシア民族衣装を着たミス・ファリェーラ(Fallera)が点火式を行います。点火したと思ったら瞬く間に火が回り、あっという間に炎に包まれてしまいました。
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勢いよく燃え上がる人形からは雨のように灰が舞い落ち、洋服につくと焦げ跡のようになってしまいます。さらに、熱風と煙がすごいので、呼吸を守るためにもハンカチの準備をお忘れなく。
こちらが燃やされる前の人形(写真左)と、燃えている途中の人形(写真右)です。こんなにかわいらしい人形なのに、燃やされている姿はちょっと怖いですよね・・・。
バレンシア市庁舎前広場のクレマは、深夜1時からが本番!
バレンシア市内中心部・市庁舎前広場の人形は、バレンシア市を象徴する張り子人形とも言えます。
通常、最優秀賞に選ばれた人形は一番最後に燃やされるというルールなんですが、バレンシア市庁舎前広場の人形は特別で、賞の受賞に関係なく深夜1時から燃やされます。
他の人形が深夜0時に燃やされますのでそれを見届けてから市庁舎前広場へ移動し、火祭りの締めくくりとして大作が燃やされる姿を見納めるのも1つのプランです。
火祭り期間中の交通に注意!
火祭り期間中は地下鉄やバスなどの運行状況が大きく変わります。
地下鉄は通常よりも遅くまで運航し、時刻表も変わります。バスは通常ルートではなく迂回して運航している線が多いので、市内への交通網にはお気を付けください。
一般車も通行止め・進入禁止などの道や地区が多く、市内中心部の駐車場は常に満車だったりしますので、市内へは公共交通機関を使用されることをおすすめします。
バレンシア火祭り<張り子人形>さいごに
バレンシアの火祭りはスペインの三大祭りの一つと言われ、バレンシア州全体がお祭りムードに包まれます。スペイン国内からだけでなく他国からも多くの観光客が火祭りを見に集まります。
また、2016年には世界文化遺産としてバレンシアの火祭りがユネスコに登録されました。3世紀にわたって継承される火祭りの文化は、今後も変わることなく続いてほしいものです。
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